技人国ビザ不許可事例(会計事務所との契約で申請 → 実態の疑義で不許可に)
会計事務所との契約で申請 → 実態の疑義で不許可に
─「技術・人文知識・国際業務」の明確化通知に付随する別紙3より
はじめに|この事例は何を示しているか
本記事は、出入国在留管理庁が令和元年7月に公表した「在留資格『技術・人文知識・国際業務』の明確化等について」に付随する
別紙3(典型的な許可・不許可事例)のうち、1件の不許可事例を取り上げ、実務的な視点から考察・分析を行うものです。
この別紙は、制度の抽象的な法令要件を補足する形で、実際の審査でどのような点が問題視されるかを具体的に示した資料であり、
申請者・企業・支援者にとって極めて重要な判断材料となります。
補足|在留資格該当性・基準適合性・相当性とは
在留資格の変更・更新審査では、主に以下の3つの観点から判断が行われます。
それぞれの要件は、制度上の位置づけと審査の厳格度が異なります。
① 在留資格該当性(制度上の活動類型に合致しているか)
出入国管理及び難民認定法 別表第一の二に基づき、以下の活動が対象とされます:
本邦の公私の機関との契約に基づいて、技術もしくは人文科学の分野に属する業務に従事する活動
申請者が契約に基づき、大学等で修得した専門知識を活かして、専門的・技術的な業務に実際に従事することが求められます。
この「在留資格該当性」は、制度の対象となる活動かどうかを判断するものであり、審査の前提条件(満たさなければ不許可)です。
② 基準適合性(申請者がその活動を行うに足る資格・待遇を備えているか)
在留資格該当性が認められた場合でも、さらに「基準適合性」を満たす必要があります。これは、法務大臣が告示で定める基準(いわゆる「告示基準」)に適合しているかを判断するもので、以下の要件が含まれます:
- 学歴または職歴
・従事する業務に関連する分野の学歴(大学・短大・専門学校卒)
・または、関連分野での実務経験(原則10年以上、国際業務は3年以上) - 報酬要件(常に必要)
・当該業務に従事する日本人が受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
このうち報酬要件は、学歴や職歴と異なり、常に必要とされる絶対的な基準です。
たとえ学歴や業務内容が在留資格に該当する活動であっても、報酬が日本人と比べて明らかに低い場合には、基準適合性を欠くものとして不許可となります。
③ 相当性(法務大臣が適当と認めるに足りる相当の理由があるか)
入管法第20条・第21条に基づき、在留資格の変更・更新は、以下のように定められています:
法務大臣が適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。
この「相当性」は、申請者の活動内容・在留状況・素行・生活状況などを総合的に勘案し、法務大臣の裁量により判断される要素です。
事例の概要(別紙3より要約)
- 申請者:経済学部卒
- 契約先:会計事務所との契約に基づき、会計事務に従事する予定
- 問題点:契約先所在地に会計事務所が存在せず、実際には料理店が営業していた
- 対応:入管における調査により疑義が生じ、説明を求めたが明確な回答が得られなかった
- 結果:契約先の実態が確認できず、専門的業務に従事するとは認められないとして不許可
審査で問題視されたポイント
- 契約先の事業実態に疑義が生じた(所在地に会計事務所が存在しない)
- 業務内容の信憑性に疑義が生じた(料理店で会計業務?)
- 入管からの照会に対し、合理的な説明がなされなかった
なぜ在留資格該当性・基準適合性を満たしていないと判断されたのか
在留資格該当性
- 契約先が実態のある会計事務所であることが確認できず、活動類型が制度に合致しているかどうかが不明確
- 実際に専門的業務に従事するかどうかが、申請書類と現地状況で一致していない
基準適合性
- 申請者は経済学部卒であり、学歴要件は形式上満たしていたと考えられるが、
業務内容の信憑性に疑義が生じたことで、その学歴と業務との関連性を審査する前提が崩れた - 契約の実在性が疑われる場合、報酬水準や職務内容の確認も不可能となり、基準適合性の審査が成立しない
実務的な対応策|同様の不許可を防ぐには
契約先の実在性を証明する
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書等)の提出
- 事業所写真・Webサイト・名刺・パンフレット等の添付
- 所在地と業務の関係性に疑義が生じる場合は、補足説明書で明示
職務内容説明書等の精度を高める
- 業務内容は「会計事務」として、記帳・申告補助・顧客対応などの具体的業務を明記
- 業務の頻度・責任範囲・使用言語なども記載し、専門性と継続性を示す
照会対応の準備
- 入管からの照会には、即時かつ合理的な回答ができる体制を整備
- 曖昧な説明や放置は、信憑性の低下に直結する
まとめ|この事例から学べること
- 在留資格の審査では、「書類の整合性」だけでなく、現地の実態と一致しているかどうかが重視される
- 業務内容が専門的かつ継続的であることを、職務内容説明書等で具体的に示す必要がある
- 契約先の信頼性に疑義が生じた場合、申請者側が説明責任を果たせなければ不許可となる
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